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zoom RSS シークレット・オブ・モンスター、エヴォリューション

<<   作成日時 : 2016/12/09 14:02   >>

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2016年12月3日 TOHOシネマズ・シャンテ
『シークレット・オブ・モンスター』 (ブラディ・コーベット)

The Childhood of a Leader 2015年 英・ハンガリー・仏 1時間56分 原作:J.P.サルトル「一指導者の幼年時代」 脚本:ブラディ・コーベット、モナ・ファストボルド 撮影:ロル・クローリー 美術:ジャン=バンサン・ピュゾ 音楽:スコット・ウォーカー 出演:トム・スウィート、ベレニス・ベージョ、ステイシー・マーティン、ロバート・パティンソン、リーアム・カニンガム、ほか
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焦燥感を煽るバイオリンと切迫感を刻むリズムが戦慄の重い扉を開き、閉じる。
テーマ曲が鳴り響くオープニングとエンディングのシークエンスは、近年最高のカッコよさ。
スコット・ウォーカーによる17年ぶりの映画スコアが、カリスマの威圧感さながらに作品の荘厳さを導き出す。

では中身はどうか?

中身も半端じゃない。

光と陰で濃密に画面設計された格調高い画力と、素材の粒子にさえ目を奪われる美術ディテール、それらが作り出す家庭内の空気と時代のリアル。

なんといっても9歳の恐るべき子供の優雅な凶々しさ。

美少女が非常にしばしば残酷なファム・ファタールになるように、美少年も罪深い。

少女のような少年がある事件で神父に謝罪しに連れて行かれた序盤、初めてまともに美形の顔をとらえたショットで見せたその拒絶する怜悧な表情、鋭利な眼力は、そこだけ大人のアンバランスが際立ち、『ベニスに死す』のタジウ以上の背徳の美を放っていた。

この子役(トム・スウィート)の存在だけで、この映画は勝利も同然だと確信させた。

その後の奇行や反撥をじっくりと仔細に見せてくれながら、クライマックスに近づいていく。

が、
一気に時代はナチス台頭を彷彿とさせる戦前期に飛び、長髪の少年プレスコットはスキンヘッドのカリスマに変貌して民衆の熱狂を一身に集める国家のリーダーとなっていた。
その姿をとらえた後、そのままカメラは渦に巻き込まれ、上下左右の秩序を失くしたショットで突然終わる。(ここ、すばらしくクール!)

で、
宣伝やサイトで謳われている「ミステリー」?
「高度な解読を要する謎」??
っていうことは、それまでの9〜10歳の少年時代をじっくりと見せたなかに、これだけのカリスマとなった理由や解読すべきヒントが含まれていたということか??
そしてそれがこの映画の主題??

因果関係なんて僕にはほとんどわからなかったけどー。
見る人が見れば、このくらいの反発や奇行や癇癪や自家中毒は、男児だったらそう珍しくもないとも思われるだろうし。

だったら、原因に対する結果をもうちょっと描いてくれないと。
「あのせいでこうなったのか」と思わせるものがないと、カリスマになった理由だけ求めてもわからない。

公式サイトでは、「“劇中に隠された伏線”にいくつ気づけたか」と題して監督自身が解説している。それによると、9つのシンボリックな伏線を取り上げているが、それを伏線ととるかどうかは、観る者の解釈に委ねられていて、そもそも解説されるものではないし、憶測は自由だ。少なくとも謎解きのQ&Aでは全くない。


美少年が最終的に惨劇を起こすまでの生い立ちを描いた同様の作品『少年は残酷な弓を射る』では、なぜそこまで彼が残酷な仕打ちをすべきだったのかは曖昧なままだったにもかかわらず、それでもその経緯の描写を見つめるだけでひどく納得して堪能したものだった。

そういう完結性が、この作品には欠けている。
中身の完成度がとびきり高いぶん、物足りなさが否めない。


★★★☆



2016年12月4日 アップリンク
『エヴォリューション』 (ルシール・アザリロヴィック)

EVOLUTION 2015年 仏・スペイン・ベルギー 1時間21分 脚本:ルシール・アザリロビック、アランテ・カバイテ 撮影:マニュ・ダコッセ 美術:ライラ・コレット 出演:マックス・ブラバン、ロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエ、ほか
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官能的とグロテスクは紙一重。

つまり気持ちよさと気持ちわるさは表裏一体。

女性監督による男性性を排した作風は、多分に感覚的・生理的、もっと言えば子宮世界。

シンボリズムの「水」は、タルコフスキーとは少しちがって、やや粘稠質の、緑青色の水の中のよう。
セリフは最小限で静寂が満たす中、耳に入るのは常に水の音。水中のくぐもった音で満たされている。

作家性云々を語る前に、この作家の夢の中に取り込まれている。
それは創造性といえばそうだが、あまりにも夢の中で、ナチュラルで、自己陶酔的でもある。母性というよりは胎内回帰。

この感じ、『イレイザーヘッド』(デビッド・リンチ)と似ている。
ただ、モノクロではなく色彩美が加わっているものの、映像ドラッグ的トリップ効果に関しては無頓着らしい。
これだけの素材が揃っていたら、もっとレトリックを使えばストーンと酔わせることができたかも。


大人の女性と少年しかいない島で、少年たちはある手術を施され、母たちは海辺で密やかな営みをしている。
もはや人間ではないかもしれない彼らの生は、あらぬ方へと進化して、聖を犯し、性も侵して、はやく子宮へ帰れと誘っているように見える。

ディストピアではない、ましてやユートピアでもない。
禁断の部屋をのぞくサスペンスで惹きつけ、一振りのミステリーで味付けした、幻想奇譚だ。
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併映された短編『ネクター』は、禁断色がさらに色濃く、エロチックと言えばこれ以上エロチックな視覚的快楽の恩恵を蒙れる映像はないかもしれない。
五感を刺激し、脳内ホルモンを刺激する。
エステティックかつデトックス効果も期待できる。

ミツバチの群れと蜂蜜。
女体からの肉汁(ネクター)。
光沢とぬめりの儀式。
原色の鮮烈な挑発。
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この日の渋谷アップリンクには、一般の映画館ではあまり見慣れない巻き巻きヘアの女の子2〜3名グループや、クールな身なりの女性シングルなどが見に来ていて、明らかに男よりも多い。
観客を選ぶこの映画を嗅ぎつける敏感さと審美眼は、さすが渋谷の女性だ、と見直した。


★★★☆

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