たぴおかたぴおの「映画は見たけれど」

アクセスカウンタ

zoom RSS ヒトラーの忘れもの、雨にゆれる女、この世界の片隅に、アズミ・ハルコは行方不明

<<   作成日時 : 2016/12/23 01:42   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

2016年12月18日 シネスイッチ銀座
『ヒトラーの忘れもの』 (マーチン・サントフリート)

Land of Mine 2015年 デンマーク・独 1時間41分 出演:ローラン・モラー、ルイス・ホフマン、ほか
画像

これもデンマーク。
今年公開の『ある戦争』もそうだ。『アルマジロ』『未来を生きる君たちへ』など、戦争を娯楽風味抜きで深く考察し、真正面から批判するデンマーク作品。

悲しく、悲しく、悲しい。
胸がつぶれるほど悲しい。
うつけもんの自分には、この浮かれたシーズンにこそ、世界の悲劇と自分の現状を対比してみるのにもってこい。

奴隷のように扱われる、罪のない少年兵たち。
絶対的規律と監視の中で、ノルマは1時間8個の地雷撤去。
発狂して走り出すことさえ許されない、数万個の地雷の砂浜。
代わりに自分が叫びだしそうだった。

でも、唯一の希望は、敵と直に話すこと。人と人同士で。
それだけで、固く縛られた糸が容易にほどけてくることも、はっきりと提示されている。

画像

2015年東京国際映画祭では最優秀主演男優賞を、デンマーク人軍曹とドイツ少年兵の二人がともに受賞した。
少年たちは14人とも素晴らしかったが。

(少し気になるのは邦題。そこから発せられる呑気なニュアンスは、残酷な内容とのミスマッチにもならない。それに「ヒトラー」という特殊性は、地雷の悲劇の普遍性には合っていない。映画祭出品時は『地雷と少年兵』だったが、「ヒトラー」を付けると客を呼べるのかな)

★★★★




2016年12月14日 テアトル新宿
『雨にゆれる女』 (半野喜弘)

2016年 日本 1時間23分 脚本・音楽・編集:半野喜弘 撮影:山田達也 出演:青木崇高、大野糸、他
画像

この映画を一文字で表すなら、「切」。

「切診」とは東洋医学で「触診」ということ。
人物の内奥に、触る。触られる。
冷たく、熱く、
触るように切る。切られるように触られる。

切なる映画。


罪と情愛、人の性(さが)と宿命。その沼にどっぷりと浸かったまんまの姿で、日本映画の核心から突如目の前に肉迫して来た、いまどき出会うことが稀な作品。

それでいて、日本映画特有の画面のくすんだ暗さが全くない。

室内の照明は陰影のふちどりを鮮やかにする。
闇はいっそう闇らしく。
白黒つけろとでも言うように。
どのショットも容赦ない。

大雑把に言えば、『そこのみにて光り輝く』佐藤泰志(原作)と呉美保(監督)と高田亮(脚本)と近藤龍人(撮影)と田中拓人(音楽)がコラボした世界観を半野喜弘ひとりで試行した感覚。
あるいは山下敦弘監督や熊切和嘉監督が佐藤泰志作品を映画化したときの作風。


沈黙


そして
青木崇高の声。

いい役者はいい声を持つ。
声の演技だけで役者の良し悪しはわかる。
おまけに沈黙でモノローグを語る。この若さで、背中で説いている。

それに対して相手役の大野いとは変則的だ。
声はあまりにも音域が狭いが、このはかなく不安定な役柄にはこのか細い揺らぎ方が合っている。
おまけに表情も容貌も、見るたびにちがう。つかみどころがない存在感。


ふたりの切実さは、ラストに向かって疾走していく。
あまりにも激しい幕切れ。
切れるほどに。
血が噴き出すほどに。

★★★★



2016年12月10日 109シネマズ川崎
『この世界の片隅に』 (片渕須直)

2016年 日本 2時間6分 原作:こうの史代 脚本:片渕須直 音楽:コトリンゴ 声の主演とナレーション:のん
画像

とにかく、まずは原作の力。

名セリフの数々、時代背景のディテールなどはこうの史代の原作漫画の通り。
主人公すずと、その一人称モノローグで語られる半径数十メートル周囲のほんわかした目線から見た、戦時の日常と惨劇。

重苦しい日常の中にこそ、なんてことのないことが、かけがえのないものとして輝く。
そのギャップを極限にして描かれる、人としての痛さ・哀しみ・喜びが、心の底に沁み入る。

映画はそんな原作のよさを余すことなく、それどころか、すずを担当したのんの声とコトリンゴの歌は作風のソフトタッチの効果を相乗させ、原作以上の感動を呼ぶ果実を生んだ。

いわば、原作のすばらしさを、手に取るようにわかりやすく、視覚・聴覚で明示してくれた作品。


戦争の悲惨さを知らせたいとき、最初から最後まで眉間に皺を寄せながら、酷たらしさと怖さと悲しみに胸をつぶされてばかりでは、見る人読む人の琴線には触れない。


これが「反戦映画じゃない」なんて、誰が言った?!
めちゃめちゃ反戦じゃないか。

とは思ったものの、沖縄の人たちの受け止め方は、やはりすんなり腑に落ちるものではないようだ。
この「ほんわか感」は、いまだ「戦後」とは言えない沖縄にとって、違和感でしかない、という感想もある。

★★★★☆



2016年12月17日 109シネマズ川崎
『アズミ・ハルコは行方不明』 (松居大悟)

2016年 日本 1時間40分 原作:山内マリコ 脚本:瀬戸山美咲 出演:蒼井優、高畑充希、太賀、葉山奨之、石崎ひゅーい、ほか
画像

初めから快調に飛ばす。
テンポの良い進行と、メリハリの利いた演出・ショットで、なかなかの手練れと感じる。
とりわけ、役者たちのキャラの作り方を見るだけで楽しめる。

時間軸を裁断してパズルのピースをランダムにつなぐ編集手法。
日本ではあまり多くは見られないと思うが、世界的には決して珍しくはない。
前後はめちゃくちゃだが、人間の脳は意外と理解できるようにできている。

全体の3分の2くらいまでは、これは快作かも!という期待感があったのだが、しかし。

だんだんと、むむ、、、あれれ、、、

原作マンガの基本情報をはしょり、ストーリーの一部を簡潔にし過ぎたことによって、展開についていけなくなってくる。
いつかわかるんだろうと思いつつ見ていたが、結局最後まで来てしまって、あらあら。
しかもそのラストが、いかにもオチがついたような終わり方だったので、「意味が分からない! ヤバイ!」

これは、ランダム編集によるものではないと思う。
致命的なのは、どの時点から失踪したのかがよくわからないこと。
アズミ・ハルコの失踪前の話ばかり出てきて、失踪後の姿が出てこないから、行方不明になるのがウソなのかホントなのか、こちらとしてはわからない。
時間軸をランダムにするには、そこんとこ注意が必要だったんじゃないか。あるいはランダム編集が合わない物語なのではないか。

ちなみに、ラストのオチは、オチですらないようだ。

★★★
画像


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「地雷と少年兵」第28回東京国際映画祭 (日本公開タイトル「ヒトラーの忘れもの」)
コンペティション作品。軍曹役のローラン・モラーと少年兵役ルイス・ホフマンとが最優秀主演男優賞を受賞。最優秀主演男優賞…。そうきたか!という感じだ。私はこの作品はグランプリでいいと思っている。と、なんか急に偉そうだけれど、偉そうな意図は全くなくて…何故この作品がグランプリに相応しいと思ったかというと、内容の衝撃度や展開のドラマ性ももちろんなのだが、マーチン・ピータ・サンフリト監督自らがQ&Aで語っていた、「デンマークにも暗黒の部分がある。それを描きたかった。」という気持ちに大変感銘を受けたからだ。... ...続きを見る
ここなつ映画レビュー
2017/01/06 15:25

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ヒトラーの忘れもの、雨にゆれる女、この世界の片隅に、アズミ・ハルコは行方不明 たぴおかたぴおの「映画は見たけれど」/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる