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zoom RSS ブラインド・マッサージ、アイヒマンを追え!、美しき緑の星

<<   作成日時 : 2017/01/17 14:19   >>

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2017年1月14日 アップリンク
『ブラインド・マッサージ』 (ロウ・イエ)

推拿 Blind Massage 2014年 中・仏 1時間55分 原作:ビー・フェイユイ 脚本:マー・インリー 撮影:ツォン・ジエン 出演:ホアン・シュエン、チン・ハオ、グオ・シャオトン、メイ・ティン、ほか
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「美」という災難に見舞われた。

というナレーションの声。
視覚がない人にとって、「美」とは何か。
という根源的な問いが降りかかる。

するとそのうち、
視覚のない人にとって「愛」とは何か。
という問いに突き当たる。

先天的に目が見えない人にとって、異性の魅力をどうやって感じるのか。
本能に任せることができるのか。
リビドーも血迷っている。

「美とは?」「愛とは?」と最近になって模索と葛藤が始まった院長フーミンは、「美人過ぎる盲人推拿師」と言われるドゥホンの顔かたちを撫でまわし、その自分の指の匂いを嗅ぎ、舐める。
美をまさぐるようにあがく(足掻く)。

ドゥホンは「目が見えないからこそ愛があるかどうか見抜けるのよ」と突き放す。

自己の殻に閉じこもりがちなシャオマーは、目の見える人々とは隔絶された孤独と、抑えられないリビドーによって常に壊れそうだった。が、ある日誘われていった性的マッサージ店の風俗嬢・マンとの「愛の行為」で愛に目覚める。
それが愛だということは、本人が確信し、それが盲目でないことは、相手のマンによって確証となる。


視覚のない闇に生きる人々の感覚は想像の域を超えているが、たとえば肌を探り合う掌と指、唇を求めあう唇、匂いを求めて顔を埋める衝動、裸体と裸体が触れ合う瞬間に感覚が研ぎ澄まされるに違いない暖かさと滑らかさ、そういったことが極私的まなざしのカメラで目の前に映されると、実体験として僅かながらにでも感覚に近づき、官能と感動を共有することができそうな気がする。

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群像劇調なのにPOV(主観)ショットで描写する。
客観的視点と極私的まなざしが同居している。
距離感が、離れつつ接し、接しつつ離れている。


視覚障碍者の多い鍼灸マッサージを生業とする僕も、目が見えない人はそのぶん触覚・聴覚・嗅覚など他の感覚が鋭敏になるのだろう、職人技として生かせるのだろうという認識は持っていたが、こと「美」「愛」「性」ということになると話はちがう。

原題は「推拿」(すいな)=中国式按摩のこと。
東洋医学では触診のことを「切診」と呼ぶ。患者に手で触れて診察・治療・慰安を行うことの可能性の大きさも示唆してくれるかと思いきや、推拿治療のシーンはほとんど見られず、逆にスキンタッチで「美」「愛」を感じることの不可能性で葛藤することが主眼となっている。
このタイトルは、その意味では皮肉な逆説になっているのだ。

エロスとは形而上学的なものであり同時に即物的なものでもあるという両義性が、この作品ではむき出しになっている。
エロスに対する男女の性差も現れている。
そこに見る者が同化できるかというと、わからない。
掴めそうで掴めない対象。
このぼやけては離れ、近づいては揺らぐまなざしこそが、テーマを具現化した表現そのものなのかもしれない。

映像表現、テーマ、物語(≠物語)、脚本(≠脚本)、演技。
それぞれが全てすばらしく、神経と血管のように求めあって一体となっている。

物語がいいだけでは映画の質としては不十分。
この映画のように、テーマと表現手法の関係が、デザインと機能の関係と同じく、相互補完的で互いが互いのためにあるときに、作品としての価値が上がる。

なおかつロウ・イエは、映画が“感情体験”であることも常に思い出させてくれる。


役者の中ではシャオマー役のホアン・シュエンをとりわけ称賛したい。


★★★★★



2017年1月15日 ヒューマントラストシネマ有楽町
『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』 (ラース・クラウメ)

Der Staat gegen Fritz Bauer 2015年 独 1時間45分 出演:ブルクハルト・クラウスナー、ロナルト・ツェアフェルト、リリト・シュタンゲンベルク、ほか
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ドイツのナチスに対する追及は、「絶対悪」の象徴として戦後、国ぐるみで容赦なく行われたかと思っていたが、全く僕の勘違いだった。無知を恥じなければならない。

『顔のないヒトラーたち』(2015年)を見ておくべきだった。

(以下、wikipediaより抜粋)
西ドイツでは当初は占領軍の手でナチスの追及が行われたが、占領期の後期にドイツ人の手にゆだねられた結果「非ナチ化はいまや、関係した多くの者をできるだけ早く名誉回復させ、復職させるためだけのものとなった」と評価される事態となった。

そしてドイツ連邦政府発足後、わずか1年あまりの1950年にはアデナウアー政権の元で「非ナチ化終了宣言」が行われた。その結果、占領軍の手で公職追放されていた元ナチ関係者15万人のうち99%以上が復帰している。1951年に発足した西ドイツ外務省では公務員の3分の2が元ナチス党員で占められていた。

実際には1945年のナチス党の解散時にナチス党員は約850万人、協力者は300万人以上にも登っており(合計で当時のドイツ総人口の約2割)、また官僚や政治家、企業経営者など社会の中核をなす層にも浸透していたことから、ナチスの追及は敗戦で荒廃したドイツの戦後復旧を優先した結果としておざなりなものとならざるを得なかった。加えて直接の関係者はもとより親族などの反対もあり、ナチス追及は不人気な政策であった。
(抜粋終わり)

とんでもない思い違いだった。
ニュルンベルグ裁判があったにもかかわらず、追放された元ナチの99%が復職し、しかも社会の中枢で国を牛耳っていた。(日本と同じかよ!)
たしかに1000万人以上という多数のナチ関係者の存在を無に帰することはできないにしても、ドイツ自らが早々に非ナチ化を切り上げ、ホロコースト犯罪者の訴追すらしないどころか、追及する正義を妨害しようとする。

そして戦後10数年しかたっていない時点で「アウシュビッツ」という言葉さえ一般に知られなくなったというのだから、驚いた。

『顔のないヒトラーたち』は、その時点から数人の有志によって「ドイツ自身の意志でホロコースト犯罪を断罪しよう」との目的で1963年にフランクフルト・アウシュビッツ裁判を開くに至る苦難の過程を描いている。

さて、『アイヒマンを追え!』は、その過程においてアウシュビッツ最大の大物戦犯であるアドルフ・アイヒマンを捕獲しドイツ国内での裁判にこぎつけようとした検事長フリッツ・バウアーの物語である。
元ナチ勢力=国家権力による妨害だけでなく、ユダヤ人であることで「復讐の鬼」と誹謗されたり、男娼を買ったことなどを掘り返されたりするなか、アイヒマン捕獲作戦を成功させ、不本意ではあるがイスラエル国内でアイヒマン裁判を実現するまでに至らせた不屈の男だ。
もちろんその功績が、ドイツ自国内でホロコーストを裁くアウシュビッツ裁判につながる流れをつくった。

アイヒマンという絶対悪を捕まえることさえ多方面から妨害され、唯一の味方イスラエルと捜査協力をするだけでも、「モサド」への情報提供は「国家反逆罪」になるというのだから、正義を前にして、なんとこの世はややこしく不条理なのだろう。

日本もかなりねじけているが、ドイツも相当ねじけていたね。
ドイツ国政府とドイツ国民が、ナチスの人道に対する罪以外に、自らの戦争(侵略)の責任について本当に反省しているかどうかは、諸説あってまだ詳らかでない。
時代も進み、世代も交代している今となっては尚さら。


フリッツ・バウアー役のブルクハルト・クラウスナーはハマり役。しかし煙草と葉巻の吸い過ぎで見ている方が煙たかった。
部下役のロナルト・ツェアフェルトは、罠に嵌められ悲しい決断をする役回りで作品のエモーション部分を支えている。


★★★★



2017年1月7日 
『美しき緑の星』 (コリーヌ・セロー)
 vimeo
La Belle Vert 1996年 仏 1時間29分 出演:コリーヌ・セロー、ヴァンサン・ランドン
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フランスで上映禁止になったとネットでここ数年話題になった1996年の作品。コリーヌ・セローの監督・主演だし、とってもしっかりつくられている好感の持てる映画なのに、世の体制側の人間にはたしかに都合が悪かろう。
お正月になんとなくふさわしいと思い、ご紹介します。(僕もようやく初めて見ました)

地球の固定観念を突き、矛盾を露わにするために、数百年生きる異星人からの視点で描写する。

菜食主義で、貨幣もなく、火も鍛冶以外では使わず、直接民主制で、武器も争いもなく、家屋も持たない移動型集団生活。

身なりはヒッピーに似ているが、もっと徹底した健康・平和共同体。

そんな彼らからすれば、地球は汚れきった危ない世界。

そこに派遣された女性は、出会った地球人がどうしようもないときは「切断」を行う。

その瞬間、地球人は凝り固まった地球の常識から解放され、カオスへと放り込まれる。

痛烈な現代社会風刺を突きつけるためのコンセプチュアルな作品ですが、美しい作品。そして意外と笑えてほのぼのポジティブな気持ちになれますよ。
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★★★★

全編ネットで見られます。
https://vimeo.com/129957744

こちらは詳しい紹介ブログ。
http://tenkataihei.xxxblog.jp/archives/51919283.html

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