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zoom RSS 私は好奇心の強い女、アダムズ・アップル [北欧映画祭]

<<   作成日時 : 2017/02/28 01:25   >>

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今年もやってきました『トーキョー ノーザンライツ フェスティバル』
真冬の渋谷の恒例企画。
今年で7年目。
北欧の寒さにシンクロしようというのだろうが、なぜか毎年、劇場はホットに超満員。
平日というのに、立ち見(=通路座り)のこともザラ。

僕は2013、15、16、17と今年で4回目。
どうにか1回は見ようと頑張って、今年は平日に2本。
最終日は立ち見だった。

北欧の独特の作風は、仏とも独とも英とも違い、ひねくれつつ暖かく、毒気がありつつユーモラスで、クールかつ独創的。
映像派もナラティブ派もいるが、いずれも背景の自然なしには語れない。


2017年2月16日 ユーロスペース
『私は好奇心の強い女』 (ヴィルゴット・シェーマン)

I Am Curious(Yellow) 1968年 スウェーデン 2時間1分 出演:レナ・ニーマン、ヴィルゴット・シェーマン、ボリエ・アールステット、ペーテル・リンドグレン、クリス・バールストレム 他
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これが50年前の映画!?
初期のゴダールのようにポップなノリのパッケージに、政治をカジュアルに考えようというメッセージを詰めて、軽〜いポルノ風味で味付けする、という60年代にしては(いや今となっても)なかなか野心的な快作。
北欧のヌーヴェルヴァーグなんて聞いたことも考えたこともなかったけど、これは明らかにヌーヴェルヴァーグだ。

ブリジッド・バルドー似だが垂れた胸とチャビーなお腹にコンプレックスを持つ若い女性レナが、アンナ・カリーナのように弾みながら街頭インタビューして回る。
「この国に階級はあると思いますか?」
「女性は搾取されていると思いますか?」
「ベトナム戦争をするアメリカをどう思いますか?」

時代は世界的にシンクロして、当時寺山修司もそっくりのドキュメント番組を作っていた。
(そして85年頃、僕らは学生仲間でそれを真似た映画を撮っていた)

ここによく出てくるのはマーティン・ルーサー・キング牧師。
公民権運動に「非暴力」を提唱して力を増した彼に、主人公を取り囲む社会は衝撃を受けたらしく、話題は「国防」についても発展していく。
ただし、ノリはあくまで軽いままだ。
そこがすばらしい。
世界を挑発しながら恋の虜になり、イノセントながら風穴を開けるのはいつも若い女性。
Kick-ass girl !

スラップスティック喜劇を基調としながら、最後は国民投票で「国防法」を改正し、武力をもって他国と戦わない、という不戦の条項を可決するところまでファンタジックに踏み込む。
(実際は男女平等に徴兵の義務を負うとか、徴兵をいったん廃止してまた復活する兆しがあるとか、理想や賛辞ばかりでは語れないことがあるのは想像に難くないが)

なんともタイムリーな、いま日本で見るべき痛快作なのでR。

★★★★☆


2017年2月17日 ユーロスペース
『アダムズ・アップル』 (アナス・トマス・イェンセン)

Adam's Apples 2005年 デンマーク・独 1時間34分 出演:ウルリッヒ・トムセン、マッツ・ミケルセン、他 
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いやあなんともひねくれていて面白くて重量感もある映画だった。
こういうのはなかなか北米じゃあ作れないね。
やっぱり北欧なんだな。

仮釈放更生施設である田舎の教会に、ネオナチのアダムがやってきた。迎えたのは世話焼きの司祭。あれこれ説明したり尋ねたりするが、アダムは素っ気ない。無口で、外見も怖い。司祭とアダムは交流していくうちに打ち解けて更生に近づいていく物語なんだろうなと予測。
しかし司祭を見ていると、なんとなく話や行動に違和感。常識などないようなアダムにも、そう見える。
ほかにいわくつきの入所者が二人いる。ブットンでるバングラ男と心の病んだメタボ男だ。司祭は彼らと同様にブットンだなりにシンクロしているように見える。いまやアダムがいちばんまともに見える。
アダムは次第に見抜いていく。司祭の正体を。そして弱みを握り、邪心が疼き、嘘や欺瞞を屈辱に変えようと打撃を加え始める。

観ている僕らは、司祭の受難の酷さと周囲の無慈悲に言いようのない理不尽を覚えるが、それにも増して、相次ぐ災難に対する司祭の反応の鈍さに、異常さを感じる。
アダムは更生しそうにないし、司祭は救済されそうにない。「悪魔のせい」だと言っている。
物語として破綻するのか。収束するのだろうか。

この不自然感は、どうやら聖書の「ヨブ記」に由来するらしい。
日本人には予備知識がない人が大多数だろうが、見ていればヒントが出てくる。

そして、見事に収束するのである。
ひねくれ感は最後までキープしつつ。
ネガティブでパワフル。

見えないが底に流れるように感じるヒューマニズムを暗渠のようにあくまで隠し通し、
最後の最後にその片鱗を少しだけ煌めかせる手管は唸らせる。
ニンマリ。
エンディング曲がビージーズの「How Deep Is Your Love ? (愛はきらめきの中に)」by Take That なのも可笑しいほど調和的な皮肉。

ヒューマニスティックなフィンランドの感動作『ヤコブへの手紙』(09)をネガに反転させたような作品ともいえる。

デンマークのスターとして日本でも人気が出ているマッツ・ミケルセンが、今作でも心身ともに痛めつけられるシビアな役で気を吐く。


★★★★☆

デンマーク映画といえば、L.V.トリアーとかN.W.レフンとかドグマ95系など、キワモノが多い感があるが、国は幸福度世界一なんですよね。映画で描かれている世界と現実とはだいぶちがうのだろうか。5月にデンマークにスタディツアーに参加して確認して来ようと思っています。




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