たぴおかたぴおの「映画は見たけれど」

アクセスカウンタ

zoom RSS 雪女

<<   作成日時 : 2017/03/07 13:46   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

2017年3月4日 ヒューマントラストシネマ有楽町
『雪女』 (杉野希妃)

2016年 日本 1時間36分 原作:小泉八雲 脚本:重田光雄、杉野希妃、富森星元 撮影:上野彰吾 音楽:sow jow 出演:杉野希妃、青木崇高、山口まゆ、佐野史郎、水野久美、宮崎美子、山本剛史、松岡広大、ほか
画像

劇場から出ると、夢から出てきたようにめまいがした。
官能的で、きもちいい。
静かで、優しい。包み込まれるように。
音も、色も、音楽も。
脳内ホルモン(オキシトシン?)で頭から目にかけてうるうるしている。

自分の夢の中に深く糸を垂れて降りてゆくような映画体験だ。

とくに劇伴音楽がすばらしい。

静寂を強調する音響も。

冒頭のモノクロ映像で、一気に夢の奥深くに引き込む大胆さ。
それ以降もセピアっぽいトーンで夢をキープする。

監督第3作目だが、1作ごとに深層心理の奥底に分け入ろうとしている。
スクリーンを境に向こうの幽玄世界がこちら側に滲み出してきているかのよう。

元々シンプルな原作だけに、余白が十分にある。
そこを十二分に使って僕らも如何ようにも想像をめぐらせられる。
おのずと、雪女の存在は何なのか、と96分のあいだ考えるだろう。

(ここからネタバレあり。人によっては鑑賞後の方がいいかもしれません)

画像

「よそもの」と彼女は呼ばれる。
移民、部落民、サンカ(山窩)、癩患者、などの流浪の民を想起させる。
ユタ・イタコ、周縁のまつろわぬ者たち、聖にして卑なる者たち、弱者で被差別の者たちに対する、「不寛容」のメタファーだと強く喚起させられる。

そして「寛容」な存在は「ばあば」であり、呪術的民間医療でユキと「霊的なもの」でつながっている。
生と死の橋渡しとして恙なく導く役どころであるのだから、人を殺す存在ではない。
その存在が、いまや排除されようとしている。
その哀しみ。

そこに「怒り」はなかった。
たぶん、排除されることが当たり前の存在として生きてきたのだろう。
それでも今、好きな人と愛し合い、人間として生きる喜びの方がまさっている。
かりそめにでもひそやかでささやかなよろこびを感じるしあわせを見つけた。
それがまた切ない。
いつまた終わるとも知れないあやかしのあやうさだから。

巳之吉はそのあやうさからしっかりとユキを擁護した。
彼は裏切らなかった。
でもあやかしは境界線があいまいになると消えてしまう運命。
意識の深層と表層の境界もそう。
巳之吉の表層に蘇ってしまった雪女は、白黒つけられ、闇へと戻らなければいけない。


現代文明が同時に描かれ、時代も意味も重層化する。
「人の存在を感知する」発光器を開発する会社。
存在を可視化できないものは不在とするデジタル文明がそこにある。

夜中に外に出てユキが見つめる光の明滅は、狐火さえ人工化されたかのよう。
自分たちのような存在、境界が曖昧な存在が追いやられていると嘆いている。
観る側も、そこに不寛容を強く感じる。

雪娘・ウメの行く末はどうなるのだろう。
ちょっと考えただけで、その境遇は図りしれず困難だ。
あるいは『おおかみこどもの雨と雪』の雪のように、次第に俗なる人間世界に馴らされていくのだろうか。
この映画では、ウメにはポジティブな未来を見つめさせているようだ。
最後、微笑みながら空を見上げるその表情は意外なほど晴れやかだった。
(ただ、その目からたしかに涙が伝っていたと、隣で見ていた娘が証言する。僕には見えなかった。それほど清々しい涙だったのだ)

画像

ウメの小学校の校庭で、集団で行う踊り(?)はユニークで面白い。オリジナルだろうか。
日本舞踊と太極拳を混ぜたようだと思ったら、急にラッキー池田と横綱土俵入りを合わせたような滑稽な動きが現れて。
山口まゆの身体のキレがいい。


不寛容を描きながら、感知されるこの包容力=抱擁力はなんだろう。
この矛盾には違和感はなく、むしろ芸術の萌芽を感じる。


強いて言えば、ユキの「頭の悪そうな」浮世離れした設定のキャラクターに、ときどき現実的な知性が垣間見えてしまう点が気になった。監督・杉野希妃の苦悩のようにも見え、少し損をしている。作中人物が超然とした存在であるほど、現実の作り手としての客観性と役者としての没入度を分離させなくてはならないのは、とても難しいことだろう。

画像

★★★★☆

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
雪女 たぴおかたぴおの「映画は見たけれど」/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる