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zoom RSS クーリンチェ、逆行、ゴンドラ

<<   作成日時 : 2017/04/01 00:19   >>

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先日、同じ日に観たある二つの映画、片や超満員で当日券なし、片や入場者3名! 祝日なのに。
どちらも作品は面白いのに、水物だなあ。
(ちなみに3名は『逆行』です)

2017年3月19日 角川シネマ有楽町
『牯嶺街
(クーリンチェ)少年殺人事件』 (エドワード・ヤン)
(英題:A Brighter Summer Day)1991年 台湾 3時間56分 脚本エドワード・ヤン、ヤン・ホンヤー、ヤン・シュンチン、ライ・ミンタン 撮影:チャン・ホイゴン 音楽:チャン・ホンダ 出演:チャン・チェン、リサ・ヤン、ほか
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TVドラマの手法を全て逆にすれば、このような映画が出来上がるのかもしれない。

この作品はこぼれるくらいの「映画的」要素で満ち溢れていて、TVドラマ的要素が皆無なのだ。

クロースアップがほとんどなく、すべて「引き」のショット。人物は全身が入る以上の遠景で写す。
だから主役の二人以外は、顔と名前が一致しない。
しかも照明が暗くて、顔や対象物が鮮明じゃない。夜なら懐中電灯を人物に持たせて済ます。

あるエピソードについて、布石を撒いたあとすぐに物語として回収しない。
ばらまいて、それぞれのエピソードが同時多発的に進行しつつ、ときどき枝葉に立ち寄りながら、布石を思い出したように枝葉や幹に回収していく。

ホウ・シャオシェン『悲情城市』でも同じ感覚を味わった。

群像劇並みに登場人物が多くいて、それぞれの背景の物語も充溢しているのに、人間関係を把握するのに少々難儀する。

この4時間の長編は、実はたった1年間の少年少女の物語であるのに、悠久の大河ドラマのように懐が深く感じられるのは、上映時間が長いだけでなく、そういうわけでもあるのかもしれない。

顔と名前と関係がはっきりしないのに楽しめるのか?と当然疑問を持たれるだろうが、なぜか4時間飽きもせずに見られてしまうのである。
なぜか。
たぶんそれは、「映画的」という言葉の定義に秘密が隠されているのだろう。
映画にしかない快楽に「溺れる」ということなのだろう。

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ギャングでありながらまだ幼い中学生だったり、まだ幼い中学生なのにエルビスをステージでムンムンに唄い上げたり、ロマンティックで娯楽的要素もふんだん。

それでいて社会的背景は、中国から渡ってきた外省人との軋轢が暴発した二・二八事件(1947)の後、戒厳令が発令され38年間(1949〜1987) つづき、白色テロが横行していたさなかの1960年。
殺伐とした社会が子供たちに及ぼす空気を凝縮して掬い取っているという面でも、秀逸だ。

4Kレストア・ディジタル・リマスター版の完成、初のDVD発売、そして25年ぶりの日本での劇場公開、初のロードショー封切り、ということで「通」には待望の上映ではあったが、座席予約は平日でも早々に売り切れたりしているのを知って驚愕。
何事かと思えば、主役の1991年当時の少年チャン・チェン(張震)が、いまやハリウッドでも活躍する国際的スターになっているという。
それで舞台挨拶のある日にファンが押し掛けた、というわけだ。

それでなくとも、土日は予約で売り切れ、当日券なしの大盛況。
4時間休憩なしのエコノミークラス症候群リスク状況下で、233席端までぎっしり。

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以下のブログも参考までにどうぞ。
http://callmesnake1997.hatenablog.com/entry/a_brighter_summer_day

★★★★☆



2017年3月20日 ユーロスペース
『逆行』 (ジェイミー・M・ダグ)

River 2015年 加・ラオス 1時間28分 脚本:ジェイミー・M・ダグ 撮影:アダム・マースデン 出演:ロッシフ・サザ−ランド、ほか
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いわゆる「逃走劇」である。
いわゆる「クライム・サスペンス」である。
ある種、「ジャンル映画」かもしれない。

しかし、そのジャンルから、ある重要な一つの点で大きく逸脱しているのである。
それが、最後のクライマックスにやってくる。
この「逃走劇」という文脈から最後の最後に外すという冒険は、いまだかつてないことかもしれない。

そしてそのオチとなる冒険は、逆に観ている僕らの胸の奥深くに「問い」として突き刺さってくる挑戦でもある。
見終わって、「逆行」の意味が最後にわかって腑に落ちると同時に、もっと核の部分で「腑に落ちない」心理状態を持ち帰ることになる。

このモヤモヤ感は、自分の行動規範を振り返り、足元の道徳観を見つめ直すということ。
娯楽映画を見ていたのに、である。

これ以上話すとネタバレになってこの物語が意味をなさなくなるので、実にもどかしい。

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もちろんサスペンスとしても申し分ない。
善人である医師が、「つい」犯してしまう事件。
心理的葛藤を冒頭から孕んでいる。
観る者は常に主役の焦燥感の側にいて、シンクロしながらももう一人の自分が「おいおい!」「マジかよ!」とツッコミを入れる。

『逃げるな、走れ』というキャッチは、『逆行』というタイトルとともに、言い得て妙。『逆走』『遡行』もありかも。
(原題は『RIVER』)

★★★★



2017年3月28日 キネカ大森
『ゴンドラ』 (伊藤智生)

1986年 日本 1時間52分 原案・脚本:伊藤智生・棗耶子 出演:上村佳子、界健太、木内みどり、佐々木すみ江、佐藤英雄、出門英、ほか
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こちらは30年ぶり。

いまや「AV界の巨匠・TOHJIRO」となった伊藤智生(ちしょう)の「伝説の第1回監督作品」で、唯一の一般映画だという。

今回リバイバル・ロードショーに至った経緯についてはよく知らないが、じっさい先行のユーロスペースとポレポレ東中野では連日超満員という事態になるほどで、そうさせたのはやはり当時からそれだけ高く支持されてきたがゆえのことだろう。固定ファンのリピーターが「あの感動」に「再会」するために足を運んだ、という声を少なからず見聞きする。
僕も学生当時からタイトルや情報はよく耳目に触れインプットされていて、興味はあったがたまたま観ることがかなわなかった作品だ。

「感動した」という声しか聞かないが、そんなファンの方々には申し訳ないのだが、僕には誠に残念ながら素直に頷くわけにはいかなかった。
谷川俊太郎石井岳龍佐藤忠男森崎東も褒めてるんだけどね。
たしかに単純にいいシーンはいくつもある。
人間不信に陥っていた少女が青年の田舎に行って初めて笑顔を見せるところなどは素直にうれしくなる。


脚本は実によくできている。
テーマも普遍性があり申し分ない。

粗が目立ってしまうのは仕方がない。
20代で5000万円の借金をして作った作品だということも割り引いてもいい。
子役と青年のセリフの棒読みも見逃そう。

感情移入はまあまあできるが、惜しい。
演出にはもっと気を配ってもらいたかった。
人物描写の演出。セリフの間を置くことだけでも、だいぶよくなる。
映像演出。いいショットも多いが、安っぽいショットも多い。
心象風景のための映像効果が多すぎて、学生映画っぽい。ズームも逆効果。

いちばん気になったのは音楽。
当時流行りのシンセ音で耳障りなうえに、必要以上に劇伴がかかる。本当に過剰。

物語至上主義なら、今言ったことは揚げ足取りにしかならないのかもしれないが、全体を見渡してみて、「よくできている」ことは必ずしも感動にはつながらない。
「いい人」が「恋人」になりえないように。

故郷・親子の再発見(青年)と、田舎・人間の新発見(少女)。
など、見事に図式化でき、物語に落とし込んでいるが、すべて言葉で説明できてしまう。そのあたりに、映画芸術でしかできない進取の要素を感じないのだ。

モラリスティック。
ポエティック。
それも、よしあし。
鳥、その死。大量のろうそくの炎。舟、海、水葬。
などのシンボリズムもそう。
刃のどちら側に落ちるか、というギリギリのライン上であることをこれほど感じたことはない。

そして、陳腐なクリシェが多いのは、感動から遠ざける。
父母の離婚の理由、夫婦喧嘩の文句。
「モノクロ画面=回想」というステロタイプ。

などなど、すべてどこかで見たことのある概念や発想であれば、作品としては残念というほかはない。
見た人だけが独自に感じることのできる余白が欲しい。
あるいは、インディーズなら尚更、いまだ誰も踏み込んだことのない未開の感情領域を発見したい。

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(まあ、「伝説の」とか言ってハードルを上げなければ、「若いのによく作ったね」と素直に感動できたかもしれないけれども)

AV監督にしてはこれ以上のギャップはないほどの(処女作ならぬ)童貞作。
会場に来ていた想像を遥かに超えた豪放なキャラの監督とは真逆の、ピュアで純朴で心が洗われる垢抜けない映画。

★★★☆

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