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zoom RSS きみの鳥はうたえる、1987、寝ても覚めても

<<   作成日時 : 2018/09/14 20:50   >>

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2018年9月8〜9日


『きみの鳥はうたえる』
三宅唱
監督
2018年 日本 1時間46分
109シネマズ川崎
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刹那が、せつない。
確かなものは求めない。

「誠実」なんて価値がない。
始まりも終わりもない。
ただ時間は過ぎていく。
永遠に続くと思われた夏も過ぎていく。

変わらないものなんてない、執着しない。
でも変わらないものを求めた瞬間が訪れたのだ。
刹那的なものが確かなものに変わる瞬間に、突然不安を感じ執着を意識する。

予感がなかったわけじゃない。
絶望の予感も希望の予感も、あるのだ。
ただ、どちらかにいつか転ぶのが、怖いのかもしれない。

それが希望の予感に傾いた時の不安と恍惚に、光が輝く。
そこのみにて。

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佐藤泰志が常に描こうとするテーマ。
ほぼ全編、柄本佑、染谷将太、石橋静河の3人は、ニヤついた目で悲観と楽観のあいだを揺れ動いている。

時代を昭和から現代に移し、けだるい情景には三宅唱お得意のヒップホップ。
これが違和感ゼロにハマってる。

全うなところが何もないような人間と、付き合い、惚れあう。
人が人と関係するときの、価値感というものは何なのだろう。

「価値」なんてものを探らないのか、もっと人間としてのコアな部分をシェアしているのか。
このやさぐれた若者たちの「価値観」はうらやましくもある。
むしろインセインな現代を生き抜くためには、人を誠実さや信念で判断しないというこの態度は、ある程度見習ったほうがいいのかもしれない。

「大人」の自分もかつてそんな一面があったことを想い起こし、郷愁さえ感じる。

★★★★




『1987、ある闘いの真実』
チャン・ジュナン
監督
1987: When the Day Comes 2017年 韓 2時間9分
シネマート新宿
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期待以上の充実度。
ボルテージ200%!
韓国から、続けざまに、ダイナマイト級の問題作が出た。

あの1980年の光州事件を描いた『タクシー運転手』が公開されヒットしてまだ間もない。
その7年後の、大きな節目の事件を描いた続編ともいえる作品が公開されるとは。


韓国では全斗煥大統領による軍事政権が続いていた。
大統領の直接選挙を求める機運が高まっていたが、民主化運動に対する警察の「反共」弾圧も徹底していた。
ある時、警察が学生を拷問で死なせてしまう。
これが表に出れば、運動は火が付いたように激化し、政権が危うくなるため、焦った政権と警察側は極秘に火葬を済まそうと慌てふためき、あらゆる手を尽くそうと躍起になる。
そこから始まった物語は、坂を転がるように勢いを増していく。

強権政治の中でも、検事の一人は疑惑を感じ取ると警察からの命令に従わず、マスコミにリークする。警察はトカゲの尻尾切りで現場の取調官のせいにして刑務所に入れる。取り調べ官は復讐の念を募らせ、一方で刑務官は外部の運動家と通じ、厳重な警戒と脅迫の中、彼らはわずかな隙を狙ってマスコミへリーク。

ところどころに、強権にまつろわぬ者たちがいることが救いになる。
そして、『ペンタゴン・ペーパーズ』でもあったように、マスコミ同士の連帯がやはり強い。一社では弱い。地方紙でもいいから、2社、3社、そして一気にあとに続くこと。それが市民のパワーを作ってゆく。
つくづく、日本に見習ってもらいたいところだ。

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作風は『タクシー運転手』同様、演出過剰気味。
でも、“アクション・クライム・サスペンス”娯楽大作として万人にウケるような見せ方をすることこそ、政治的な告発調の作品には必要で効果的。

カワイ子ちゃんwも出て、ボーイ・ミーツ・ガールの恋愛譚もちょこっと味付け。
(いや、終盤からはなかなかどうして本スジになってくる。)
これも大事。


さらにこの映画のすごいところは、登場人物がすべて実名で登場し、全斗煥をはじめ金大中金正男などが本物の写真で映る。
脚色をしているにしても、まだ生存中の人も含め真正面から告発するなんて、作り手もスポンサーも余程の覚悟だ。
それだけ韓国の民主化が進んだという点で、隔世の感があり感慨深い。

むしろ日本映画でこういうものを作れるか?と自問すれば即「ムリだ」と自答する。
こんな近過去の国政の弾圧事件について反省と非難と告発をする企画自体、スポンサーが付くか。
この『1987』は製作費をたっぷり使った大作である。
NHK的なドキュメンタリーではないし、ましてや三上智恵監督作品のような寄付金に支えられて成り立つ独立映画でもない。

たとえば吉田首相時代の講和条約前後の密約、岸首相時代の安保闘争と倒閣、佐藤首相時代の沖縄返還に関する密約、ロッキード事件における田中角栄逮捕の謀略、などなど政治の裏話を実名で告発するドラマなど永遠に作れはしないだろう。
今の安倍政権下の極右化の流れにあれば尚更だ。

「民主化」という意味では、日本は逆行していて、韓国に追い抜かれていると言ったほうがいい。

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舞台設定はソウル・オリンピックの1年前。
政権側は国家的成功を使命としつつも軍事政権を維持しようとしていたのに対し、国民は大統領直接選挙を機に民主化へ突き進もうとしていた。
結果的には全斗煥は退陣したが軍出身者による盧泰愚政権が続き、その年の暮れには大韓航空機爆破事件も起きている。
よく五輪が成功したものだと今になって思うが、2年後の90年には初の文民出身である金泳三大統領が誕生し、軍事政権時代の全斗煥らの弾圧を追求する段階に及んだ。
こうしてみると、やはり87年の民主化抗争と88年のソウル五輪は民主化への象徴的な契機として見ることができる。

片や、2020年の東京五輪はどうだ。
2018年現在、安倍政権によるファシズム化の重大な一端を担う道具として利用される勢いを加速している。
民主主義を捨てたがっている国民が迎えようとする五輪は、なんと対照的な反民主化五輪なのだろう。


公開2日目の日曜の劇場は、ロビーが大混雑で異様な雰囲気に。
見終わった観客たちは、泣く人あり、興奮冷めやらぬ人あり、言葉を失っている人も感情の奔流に襲われているのは明らかだった。


★★★★



『寝ても覚めても』
濱口竜介
監督
2018年 日・仏 1時間59分
109シネマズ川崎
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主役・朝子のフワフワ感はキャラクター造形なのだから仕方ないとは思うのだが、それに女優(唐田えりか)の存在感のなさが掛け合わさると、どうにも頼りなげな感じが作品全体に拡がってきてしまう。
他の俳優の演技で確固とした悲劇的要素が築かれるなかで、彼女だけがどうしてあんなに遊離しているのだろう。

物語に関しては、原作を読んでいないので何とも言えないし、「僕だったら、わたしだったら、あんなことしない」的な読み方は作品評価とは無関係なので僕はしない。

それでも、彼女のやってることと、言ってることと、感情の表出が、ここまでアンバランスだと僕にはついていけない。

少し時間がたってじわっと気づくのは、物語の「芯の強さ」のようなものが頭の中で感触として残っていること。
それは主役男性(とくに後から会う亮平)の感情がしっかりと築かれているせいだろう。
脚本の力もあるだろう。
胸が掻きむしられるような感覚が湧いてくる。

冒頭のねずみ花火を使った二人の出会いのシーンは、なかなかにイカした演出。
このボーイ・ミーツ・ガールはかなり期待感が盛り上がったのだが。


★★★☆

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